長北 健嗣 
 長北 健嗣
 (kenjinagakita)

【第9回】“たとえ力”を磨いて印象に残るコピーを作ろう

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こんにちは。コンセプトライターの長北です。

前回は、五感をフル活用させることで、表現力がグンとアップする方法をご紹介しました。文章をイキイキさせる“五感ワード”を日頃からぜひ準備しておきましょう。

 

 

たとえ話を作るための第一歩

 

さて、今回は、わずかな工夫で印象が面白いようにアップする“言いかえ法”についてお話しましょう。「言いかえる」とは、モノゴトの見方を変えて説明すること、つまり、たとえ話ですね。

 

「ストーリーの作り方を説明してもらったばかりなのに、たとえ話なんてハードル高すぎ。絶対作れない!」というあなた。おっしゃるとおり、たとえ話を作るのは簡単ではありません。

 

たとえ話をつくるためには、

1.説明したいモノゴトの本質をしっかりと理解していて

2.表現の引き出しがたくさんあり

3.1と2を結びつける柔軟な脳味噌があり

4.結びつけた1と2をわかりやすく文章化する能力が必要

ちょっとハードル高いですね(^^;

 

でも、ここで諦めてしまうのはもったいない。なぜなら、たとえ話は読者や聴衆を一気にあなた色に染上げる、最強にパワフルな表現方法だから。古くはイエス・キリストからスティーブ・ジョブズ、村上春樹…、人々に強烈なインパクトを与えてきたプレゼンターとたとえ話は、切っても切れない関係にあるんです。

 

そこで、今回は入門編として、“たとえ”に焦点を当ててみたいと思います。モノゴトをたとえてみるだけ。話まで作らなくてもOKです。とはいえ、あなどってはいけません。

 

ちょっとした“たとえ”だけでも、相手に強い印象を残すことは可能です。では、さっそくトライしてみましょう。

 

まず、皆さんは“たとえ”と聞いてなにを思い浮かべますか? 私は、「春の熊」がパッと頭に浮かびます。ピンとくる方は納得、そうじゃない方は「え? なに? 春の熊って?」と頭の中が「?」で満たされたと思います。

 

「春の熊」とは、村上春樹の小説『ノルウェイの森』に出てくる“たとえ”です。「(私のこと)どれくらい好き?」と彼女に問われた主人公は、こう答えます。「春の熊くらい好きだよ」。意表をつかれた彼女は「それ何よ、春の熊って?」と主人公に聞き返します。

 

当然、読んでいた私も「春の熊」が気になり、続きをむさぼり読んだのは言うまでもありません。主人公のどんな説明をしたのか気になる方は、ぜひ小説を読んでみてください。

 

このように、25年も前に読んだ“たとえ”が未だに強い印象を残しているのです。それは強烈な「?」が頭の中に浮かんだから。そして、その疑問が解き明かされたからなんですね。まず、彼女の「好き?」に対して唐突に「春の熊」をぶつけて読者の頭の中に大きな「?」を生じさせます。

 

次にその関係性を解き明かすことによって「あ、そういうことだったのか!」と印象を強く深くしているわけです。「わかった瞬間、脳に快感」の“アハ体験”みたいなものですね。

 

 

“たとえ力”=あだ名力!?

 

村上春樹のような離れ業(!?)はともかく、この“関係なさそうなものを組み合わせる”方法、実は私たち、子供の頃から実践しているんです。それは、あだ名。

大人になっても、お笑い芸人の有吉弘行さんのように冴え渡っている人が稀にいますが、小中学校の頃は誰もがやっていましたよね。

 

たとえば、小学校のクラスに伊藤由紀子(仮名)さんという同級生がいたのですが、あだ名はなぜか「なっちゃん」。清涼飲料水のCMで“なっちゃん”役だった田中麗奈さんに似ていたとかいうわけではなく、由来は意外にも「生意気のなっちゃん」。

 

字面だけでは関連性がまったくわからなくても、本人を知っていると深くうなづける。「たとえ」の域に達していると言えるでしょう。

 

大人になった彼女が、合コンに参加したとしましょう。「伊藤由紀子です。ニックネームは“なっちゃん”です。よろしくね!」。男性陣の頭に「?」が生じ、おそらく「由紀子さんなのに、なんで“なっちゃん”なの?」と聞くはずです。

 

そこですかさず「それはね…」と話せば、良いか悪いかは別として、これ、間違いなく印象に残りますよね。

 

とはいえ、そんな都合のいいあだ名、持っていない人の方が多いでしょう。そこで便利なのが、「人」を「モノや動物など」にたとえる方法です。「看板娘」や「生き字引」などがそれ。「人間風車」(ビル・ロビンソン、プロレスラー)なんてのもありました(古すぎる!?)。

 

列車のタイムスケジュールに詳しければ「動く時刻表」、美味しいお店に詳しいなら「歩くグルメマップ」などが考えられますね。試しに、あなたも自分の得意技をモノや動物に例えてみてください。

 

一方、モノを強調したい場合、慣れるまでは、とにかくなんにでも“くん”や“さん”、“ちゃん”をつけて強制的に「人」にしてしまうのがコツです。主語を「人」にたとえれば、文全体も自ずとそれに寄り添います。

 

 

では、当連載でおなじみ、ベネズエラ産のコーヒー豆を「人」に例えてみましょう。

 

元の文はこうです。

『見渡す限りのコーヒー畑が広がるベネズエラの農園から、燃えるように赤い新鮮な豆を直輸入しています』

 

“豆”を“コーヒー豆くん”に変えてみましょう。

『見渡す限りのコーヒー畑が広がるベネズエラの農園から、燃えるように赤い新鮮なコーヒー豆くんを直輸入しています』

 

“豆”が“コーヒー豆くん”に人化すると“直輸入”という表現に違和感がでてきますよね。ちょっと手をいれてみましょう。

『見渡す限りのコーヒー畑が広がるベネズエラの農園から、燃えるように赤い新鮮なコーヒー豆くんがやってきました』

 

もう少しだけ手を入れて、コーヒー豆くんを強調してみましょう。

『見渡す限りコーヒー農園が広がるベネズエラからやってきた、燃えるように赤くて新鮮なコーヒー豆くんです』

 

人にたとえるだけで、なんとなく親しみがわいてきませんか?

“たとえ”には強い印象を残すほかに、モノゴトをわかりやすくする効果も併せ持っています。次回はそのあたりをお話しましょう。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また来週お会いしましょう!

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