夏川 賀央 
 夏川 賀央
 (gaonatsukawa)

【第11回】商品を普及させるために、電子書籍で「ハウツーを売る」

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皆様、こんにちは。夏川賀央です。

 

電子出版の考え方について考察している連載。前回は中井結未衣さんの『あなたの気持ちを花で贈るプリザーブドフラワーの選び方』という電子書籍を題材にして、「お店の商品をキレイな写真本にして公開する」という例を紹介しました。

 

今回はさらにこれを発展させ、「商品でなくハウツーを売る」というマーケティング例を紹介します。題材にするのは、やはり「賢者の書店」より発行した本。大森由紀子著『あなたを素肌美人に変える! ローズヒップの魔法』(http://kenjabook.jp/library/pg95.html)というものです。

 

 

なぜ、この商品をお客さまに「買ってほしい!」と思うのか?

 


「ローズヒップ」って何か? ブログをご覧の皆さま、ご存じでしょうか?

 

女性の方なら、「あっハーブでしょ!? あの赤いヤツ」と思われる方も多いかもしれません。確かにハーブには違いないのですが、日本で市販されている「ローズヒップ・ティー」という赤いお茶は、あれ実際はほとんどハイビスカスのお茶なんです。

 

では本物はどういうものかといえば、実の粒が底に沈殿したドロッとした飲み物。日本では馴染みがないのですが、ヨーロッパでは古くから医薬品や栄養補助食品として口にされてきたものです。

 

医薬品に用いられたのは、レモンの18倍とされる豊富なビタミンCを含んでいるから。「ビタミンCの爆弾」と呼ばれ、壊血病予防のために船に積まれたような果実だったんですね。

 

さらにすごいのは、この実を使った「オイル」の保湿効果で、往年の大女優・カトリーヌ・ドヌーブが使用していたことでも知られています。60代で「世界で最も美しい女性」に選ばれたという方ですから、美容業界ではものすごくよく知られたものだったんです。

 

とはいえ、日本ではあまり知られていない……ですよね?

 

じつはこの本の著者の大森由紀子さん、ローズヒップの魅力に取り憑かれ、チリでとれた天然の材料を使ったオイルやティーを販売する店舗を夫婦で始めた、この商品の第一人者とも言える方です。

 

「プロヴァンス・ガーデン」という楽天内のショップは、知る人ぞ知る、大人気サイトとなっています。けれども天然のローズヒップの力や、それを加工した商品による「健康法」や「美容法」を知らない人は、気づかずにスルーしてしまう……。それはもったいないですよね。

 

そこで電子出版で商品ならず、「ハウツー」を売ろうと考えたわけです。

たとえばサイトで商品を売り、そのわきに電子の書籍をリンクしておく。商品を買った方は、ついでに商品をダウンロードして、使い方を学んだ上で商品をよりよく購入できる。

 

つまり、あくまで本のほうは商品の意義を普及させるため。メーンは、商品のことをよく知ってもらうことなわけです。とくにネット通販の場合、安く作成でき、手軽にダウンロードできる電子書籍は、普及ツールとして活用できますよね。

 

ちなみに「プロヴァンス・ガーデン」のリアルな店舗では、電子出版のデータを活用した「小冊子」をお店で直に買えるようになっています。一度、電子でも「本」としてまとめてしまえば、印刷も安上がりで済む。こうしたメリットも、電子書籍にはあるわけです。

 

 

古くから行なわれてきたハウツー戦術

 

じつはこのように「いままで知られていなかった新しい商品を売る」という場合に、そのハウツーを普及させるためにメディアを使う方法は、昔からあったアイデアでした。

 

たとえば「任天堂」です。この会社が世に知られるまでに飛躍したのは、Wiiやらファミコンやらよりもずっと前。一九五〇年代に、ディズニーと提携した「トランプ」を大成功させたことに溯ります。

 

ただこのとき、子どもたちに「トランプ」なんていったって、チンプンカンプンだったんです。ババ抜きだの、七並べだのといった、遊び方を知っている子がそんなにいません。

 

そこで任天堂は「トランプの遊び方」を冊子にまとめて、それを商品と一緒に普及させたわけです。「ディズニー可愛い!」でなく、「トランプって面白いね!」と知った子どもが増えたことによって、爆発的なヒットとなりました。

 

 

直接、企業がマーケティングしたわけではありませんが、数年前にはイタリアのモレスキン社製の手帳が爆発的に売れました。ご存じのようにこちらの手帳、オリジナルは一九世紀に溯るもの。丈夫だということで、ジャーナリストだったり、フィールドワークをする人には地道に愛されてきたんです。

 

ただ数年前にビジネス書で、この活用法を書いたものが大ヒットしました。それによってビジネスパーソンがこぞってモレスキン製品を買うようになった……というわけですね。

 

もちろん雑誌で火をつけたり、メディアで話題になったり。京大式カードに、ポストイットに、各種健康法、ダイエット法、フェイスブックなどもそうかもしれませんが、「先にハウツーや考え方を普及させる」ということは、多く行なわれてきた方法です。

 

ただ、簡単でない……というのはその通りなんです。本を出すにも、雑誌に広告を出すにも、やはりお金がかかる。大企業ならともなく、ネット通販から始めるような会社に、それだけの投資はなかなかできません。

 

むろんウェブ公開は一つの方法ですが、ウェブで記事を眺めるよりも、本できちんとした内容を知った人のほうが、魅力には惹き付けられやすい。

 

そこで電子出版というのは、一つのアイデアになるわけです。むろんその普及力はいま現在で十分といえませんが、これが人の目にとまるきっかけになれば、そこから広がっていく可能性も考えられる……。

 

何よりほとんど投資金いらず、「安くできる」ならば、やってみる価値もあるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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